長崎の歴史・文化・伝統が凝縮された「長崎くんち」
2024.11.15
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1634年から続く諏訪神社の秋季大祭「長崎くんち」。博多や唐津のくんちと並び、日本三大くんちと呼ばれています。毎年10月7日から3日間かけて行われる奉納踊や庭先回りでは、各踊町ごとに個性溢れる演し物が披露され、その衣装や要素には異国文化の影響が強く感じられるものもあります。昭和54年には国指定重要無形民俗文化財に指定。毎年県内外からくんちファンが訪れて、街は大いに賑わいます。今回の日誌では、今年行われた長崎くんちの模様を振り返ります。
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長崎くんちにおいて、各踊町が演し物を披露するのは7年に一度となります。奉納踊を披露する当番となる踊町は長崎市内に58ヵ町存在し、7つの組ごとに出演します。それぞれの演し物には受け継がれてきた伝統文化があり、並々ならぬ思いで本番に臨みます。長崎くんちの始まりは6月。踊町の世話役や出演者が諏訪神社・八坂神社にて大役の達成を祈願します。この日から各踊町は演し物の稽古をスタートさせ、体力づくりにも取り組みます。
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こうした演し物や庭先回りの予行練習は、陶々亭の近くでもたびたび行われていました。外から龍踊りの銅鑼やラッパ、シャギリ(囃子)の音が聞こえてくると、胸が騒ぐような、ワクワクする気持ちになります。
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そして本番が間近となった10月3日に行われるのが「庭見世」。表通りに面した店舗などに、町の出演者に贈られたお祝い品を並べます。また傘鉾や演し物の曳物、衣装、小道具、楽器なども飾られて、街全体がくんちムードに包まれます。庭見世は一日のみ、それも夕方の短い時間だけということもあり、当日はあいにくの天気でしたが傘をさしてたくさんの人が見物に訪れていました。
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そしていよいよ迎える10月7日前日(まえび)、まずは諏訪神社での奉納踊が行われます。ここからは、今年出演した7つの踊町の演し物の一部をご紹介します。麹屋町は川船。二匹の鯉から水しぶきが上がり会場を盛り上げます。踊町の中で大きさ・重さともに随一の川船はまさに豪快。最大の見せ場は、クライマックスに子どもの船頭役が網を打つ場面で、豪華絢爛な衣装も見事です。
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五嶋町は龍踊。長崎くんちを代表する演し物の龍踊は、中国の雨乞いの儀式が由来となっています。青龍と白龍、躍動感のある2体の龍が玉を探し、そして追いかける姿は、まるで本当に生きているかのようです。
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銀屋町は鯱太鼓。長崎大水害のような災害が再び起きないように、そして復興に立ち向かう人々に吉祥が訪れるようにという願いが込められています。大きな担ぎ物を回し、放り投げ、鯱が天高く龍になる様子を表現。勇壮な演技が特徴的です。
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万才町は本踊。踊町によって様々な演目がありますが、万才町は今年新たに曲を制作。民謡などをもとに長崎の四季や情景を描きました。子どもも大人も一緒に、町内で力を合わせて披露する本踊。美しさと見応えがあります。
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こうした演し物は、諏訪神社や中央公園といった大きな会場だけではなく「庭先回り」でも楽しむことができます。庭先回りとは、各踊町が市内中心部の事業所や官公庁、民家などを回り、敬意を表して踊りを呈上すること。それぞれ短い踊りやお囃子を路上で披露するため、演し物を見たい、そして福にあやかりたい人が続々と追いかけます。こうした町との一体感こそ長崎くんちの醍醐味で、まち歩きや観光とともに伝統文化を楽しむことができます。10月8日の中日(なかび)にかけて市内を回った後、最終日10月9日の後日(あとび)には各踊町が再び諏訪神社へと戻り、祭りはフィナーレを迎えます。
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今年の長崎くんちは徐々に天候が下り坂となってしまいましたが、新型コロナの影響もあり10年ぶりの当番となった踊町、そして大勢の観衆からは熱気が伝わりました。陶々亭では長崎くんちに合わせて、諏訪神社のさじき席がセットになった特別宿泊プランをご用意。県外からたくさんの方がご宿泊されて、特に五嶋町の龍踊りが好評のようでした。長崎の文化と歴史、そして伝統が感じられるお祭りを目的に、秋の長崎を訪れてはいかがでしょうか。