生まれ変わった築100年以上の古民家の見どころ

2024.08.23

  • 陶々亭の建物は、もともと明治末期に貿易商の青田家の住宅として建てられました。その後、持ち主が変わって昭和24年頃に中華料亭「陶々亭」が開業。2011年には長崎市都市景観賞の奨励賞を受賞します。そうした歴史的な建物の良さを活かしながら、新たにオーベルジュとして生まれ変わった陶々亭は、懐かしい時代の面影を感じさせる見どころがたくさんあります。その中でも、特に注目してほしいポイントと歴史をご紹介します。

  • 昔ながらの建物が密集した十人町の路地、緩やかな坂を登った先に見えてくる陶々亭の建物は、築100年以上の日本家屋です。建物の上棟は明治41年。大正5年には庭の手前側の増築が行われたそう。主屋、離れ、蔵が一体となった和風建築で、昭和の時代に中華料亭「陶々亭」が開業した後も、風情ある外観や内装は大切に受け継がれてきました。

  • 御影石の門中や漆喰の壁など、重厚な外観にまず目を奪われます。そして乱敷きの玉石が埋め込まれた飛び石に導かれて進むと、まさに商家らしい大きさの立派な玄関が待ち構えています。こうしたアプローチは当時のまま。変わることなくお客さまをお迎えします。

  • 1階客間だった和室は、現在レストラン「HAJIME」の客席となっています。和風建築ならではの美しい天井や欄間、窓枠の意匠が今も残され、思わず触れてみたくなります。中庭の池は、中華料亭時代と同じように鯉や金魚が悠々と泳いでいます。ちなみに窓ガラスの一部はビードロで、斜めから見ると向こう側が少し歪んで見えます。現在は入手が困難で、独特の風合いを大切に楽しんでいただければと思います。

  • 主屋2階の宴会場は、新たに客室「主屋」として生まれ変わりました。最大の特徴は、L字側に長く伸びた縁側。こちらも当時と変わらない部分で、見事な板張りはぜひ注目してほしい箇所です。かつては周囲に高い建物がなく、遠くには長崎の港が見えたそう。宴の合間、ここから眺める景色は綺麗だったことでしょう。他にも随所に日本家屋らしい造りが残されている部屋です。

  • 古い建物の魅力をより一層引き出すのは、モダンなヨーロッパ家具や現代アーティストの作品。歴史を重ねた風合いと新しい感覚のデザインがコントラストとなり、陶々亭ならではの独特な空間を生み出します。そして築100年以上でありながら、貴重な建物が時代を超えて残っているのは、創業当時から陶々亭を愛する人たちがきちんと手入れし続けてきたからこそ。そうした思いをさらに繋げていくためにも、私たちはオーベルジュとなった陶々亭を大切に受け継ぎます。今回ご紹介した部分以外にも、見どころはたくさんあります。ぜひ実際に足を運び、その魅力を五感で堪能していただければと思います。